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test nishida
東京大学大学院医学系研究科精神医学 小池進介、笠井清登
JARTは、精神疾患患者の病前IQを簡便に調べる方法として、National Adult Reading Test(NART)1)の日本語版として開発された2, 3)。JARTは、漢字2~3文字からなる単語50語の読みテストであり、検査者は被験者に単語リストを提示し、音読してもらうことで、正答数をカウントし、病前IQを推定する2, 3)。また、25項目短縮版(JART25)の妥当性も担保されている3-5)。もともとJARTは、アルツハイマー病を持つ人の病前IQを対象として標準化された2, 3)が、その後統合失調症を持つ人にも妥当性が示された4, 5)。
近年、大規模な臨床疫学調査・研究などで、対象者の知的レベルを簡便に評価するスケールへのニーズが高いが、既存のJARTは面接法であるため、多数のデータを取得することが困難であった。大規模疫学研究では、質問紙調査が一般的であるため、筆記版の開発が必要である。そこでわれれれは、JART25の筆記版を開発した6)ので、日本人を対象とした臨床疫学研究等に広く利用いただきたく、ここに紹介する。
NARTは、不規則な発音をする英単語を発音してもらうことで採点する。しかし、日本語の特性上、不規則な読み方をする漢字を音読してもらっても、ひらがなで書いてもらっても、判定は変わらない。そこで我々は、被験者に「何も調べないで回答してもらう」よう教示し、筆記版JART25の回答を得た。後日、通常のJART25を実施してもらうことで、筆記版JART25の信頼性を検討した。
JART25筆記版の使用について
JARTの版権は、新興医学出版社にあります。必ず
『知的機能の簡易評価 Japanese Adult Reading Test(JART)実施マニュアル』
および問題用紙・記入用紙を正規にご購入のうえ、ご使用ください。JARTは面接法を想定して開発されていますので、筆記版使用のための当面の措置として、正規の問題用紙の上に回答すべき25項目を被験者にわかるようにマーキングし、正規の記入用紙(本来は検査者が被験者の回答を記入するためのもの)を被験者の自記回答用としてお使いください。
なお、当方に対する筆記版JARTの使用許可等のご連絡は不要です。
本研究で用いたJART25筆記版実施の際の教示の情報を希望される場合は、skoike-tky@umin.ac.jpまでご連絡ください。
筆記版JARTを使用した研究の学会発表・論文等には文献6) Hirata-Mogi S et al. 2016を引用ください。
【参考文献】
- Nelson H: The National Adult Reading Test (NART) Test Manual. NFER-Nelson, Windsor, UK, 1978.
- Matsuoka K, Uno M, Kasai K et al: Estimation of premorbid IQ in individuals with Alzheimer’s disease using Japanese ideographic script (Kanji) compound words: Japanese version of National Adult Reading Test. Psychiatry Clin Neurosci 60: 332-339, 2006.
- 3) 松岡恵子, 金吉晴: 知的機能の簡易評価 Japanese Adult Reading Test (JART). 2006, 東京: 新興医学出版社.
4) 植月美希, 松岡恵子, 金吉晴ら: 日本語版National Adult Reading Test (JART)を用いた統合失調症患者の発病前知能推定の検討. 精神医学 48: 15-22, 2006.
5) 植月美希, 松岡恵子, 笠井清登ら: 統合失調症患者の発病前知能推定に関する日本語版National Adult Reading Test(JART)短縮版妥当性の検討. 精神医学 49: 17-23, 2007.
6) Hirata-Mogi S, Koike S, Toriyama R, et al.: Reliability of a paper-and-pencil version of the Japanese Adult Reading Test short version (JART25). Psychiatry Clin Neurosci. 2016 in press.
(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pcn.12400/abstract)