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不眠症治療は不眠の認知行動療法から始めることが薬物療法から始めることよりも長期的に有益
◆不眠症治療の最初の治療として、不眠の認知行動療法 (CBT-I)、睡眠薬、両者の併用のどれから始めると長期的な寛解につながるかを、系統的レビューとネットワークメタアナリシスを用いて明らかにしました。
◆不眠症治療を受けていない人のみを対象として行われたランダム化比較試験に限定して解析を行うことで、世界で初めて、初期治療の効果を明らかにしました。
◆非常に多くの患者がいて重大な疾患である不眠症について特に有効な初期治療法が明らかになりました。CBT-Iの普及を後押しすることが期待されます。
概要
東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻臨床神経精神医学講座の古川由己大学院生(医学博士課程)らの研究グループは、系統的レビューとネットワークメタアナリシスを実施し、不眠症治療を何から始めるのが長期的に有益かを明らかにしました。
本研究では、不眠症治療を受けていない人のみを対象として行われたランダム化比較試験に限定して解析を行うことで、世界で初めて、初期治療の効果を明らかにしました。既往研究に基づき、薬剤については臨床現場で実際に使われていて有効性も示されたものに限定し、 不眠の認知行動療法 (Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia, CBT-I) としては有効性の示された要素( 睡眠制限 、 刺激統制 、 認知再構成 、マインドフルネス)が少なくとも一つ含まれているものに限定し有効でない要素(睡眠衛生指導、リラクゼーションなど)だけのものは除外することで、臨床的に意義のある比較を実現しました。
長期的(24週後)に、CBT-I単体から治療を開始したほうが、薬物療法単体で治療を開始するよりも治療効果が高かったです。また、短期的(8週後)にもCBT-Iの方が薬物療法よりも治療効果が高かったです。併用療法も薬物療法よりも有益である可能性が示唆されましたが、CBT-I単体以上の効果はなさそうでした。不眠症治療の初手からCBT-Iを行うことの重要性が示されました。
この研究成果は今後、不眠症の認知行動療法の普及を促進し、多くの方が悩む不眠症の改善につながることが期待されます。
系統的レビュー
研究課題に則した検索を複数のデータベースで行い、あらかじめ策定した基準と照らし合わせて該当する論文を収集してまとめる手法です。
ネットワークメタアナリシス
複数の介入の有効性や安全性などのアウトカムについて、複数の試験結果を基に、直接比較に加え、間接比較による知見も総合して効果を推定する手法です。A vs BとB vs Cの結果から、A vs Cの効果も検討できます。
論文情報
雑誌名:Psychiatry and Clinical Neurosciences
題 名:Initial treatment choices for long term remission of chronic insomnia disorder in adults: a systematic review and network meta-analysis
著者名:Yuki Furukawa*, Masatsugu Sakata, Toshi A. Furukawa, Orestis Efthimiou, Michael Perlis(*:責任著者)
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pcn.13730
解説ブログ:https://yukifurukawa.jp/initial-treatment-for-insomnia/