不眠の認知行動療法はうつ病治療としても有効

◆不眠のみを対象とした認知行動療法が、不眠を伴ううつ病の治療として有効であることを系統的レビューとメタアナリシスを用いて明らかにしました。

◆不眠症状の項目を除いた抑うつ症状についても改善が認められました。

◆不眠に悩むうつ病の方は多く、CBT-Iの普及が期待されます。

概要

 東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻臨床神経精神医学講座の古川由己大学院生(医学博士課程)らの研究グループは、系統的レビュー(注1)とメタアナリシス(注2)を実施し、不眠を伴ううつ病治療として、不眠の認知行動療法が有効かどうかを明らかにしました。
 本研究では、不眠症状のあるうつ病の方を対象として行われたランダム化比較試験を特定して解析しました。 不眠の認知行動療法 (Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia, CBT-I) としては有効性の示された要素( 睡眠制限 、 刺激統制 、 認知再構成 、マインドフルネス)が少なくとも一つ含まれているものに限定しました。
 CBT-Iは、不眠症状だけでなく、抑うつ症状も改善しました。抑うつ症状の評価尺度から睡眠に関する項目を除いても、抑うつ症状改善が認められました。CBT-Iの抑うつ症状改善効果は、睡眠に関する領域に限定されないことが示されました。
 不眠に悩むうつ病の方は多く、今後、不眠症の認知行動療法が普及し、多くの方が受けられるようになることが期待されます。

用語解説

系統的レビュー

研究課題に則した検索を複数のデータベースで行い、あらかじめ策定した基準と照らし合わせて該当する論文を収集してまとめる手法です。

メタアナリシス

複数の研究の結果を統合することでより確かな推定を行う統計学的手法です。

                                      

論文情報

雑誌名:Journal of Affective Disorders
題 名:Cognitive behavioral therapy for insomnia to treat major depressive disorder with comorbid insomnia: A systematic review and meta-analysis  
著者名:Furukawa Y*, Nagaoka D, Sato S, Toyomoto R, Takashina HN, Kobayashi K, Sakata M, Nakajima S, Ito M, Yamamoto R, Hara S, Sakakibara E, Perlis M, Kasai K.(*:責任著者)
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jad.2024.09.017
解説記事: https://yukifurukawa.jp/cbt-i-for-mdd/