教育・研究・採用

研究・大学院

教室主任

笠井清登(経歴

研究理念

①発達疫学 ②比較発達神経科学 ③発達精神医学のトライアングルを中心コンセプトとして取り組んでいます。
①については、東京都医学総合研究所、総合研究大学院大学との共同により、世田谷区・三鷹市・調布市の3自治体の協力による思春期コホート研究(Tokyo Teen Cohort; TTC)、③については、統合失調症の前駆状態・初回エピソードの縦断研究(Integrative neuroimaging studies for schizophrenia targeting early intervention and prevention; IN-STEP)に取り組んでおります。①と③がコンセプトを共有しながら、「思春期の自我・価値の形成とwell-being」、「思春期精神病理のレジリエンスとリカバリー」を双方向的に解明し、教育・保健施策や治療・支援法の開発につなげることが重要です。②は、①とのつながりでは、ヒトに特徴的なメタ認知や言語を基盤とした自我の成立や内的な価値の形成の解明のために、動物における自我や価値の前適応の神経回路基盤とその発達の研究(比較発達神経科学)が重要であると考えられます。また、③とのつながりでは、生活場面や対人場面での神経活動計測を開発する(「real-world neuroimaging」「two-person neuroimaging」)ことや、精神疾患の薬理学的・神経モジュレーション的介入法を開発するための、ヒトと動物で共通に測定できる「トランスレータブル脳指標」の開発が重要であると考えられます。

このような理念を共有していただける若い方々の仲間入りをこころよりお待ち申し上げます。

思春期の総合人間科学的研究
日本における児童精神医学の確立
診断・治療法の開発研究

多施設共同研究により光トポグラフィーが精神科初の先進医療に認められ、2014年からの保険適応収載に貢献しました。
統合失調症患者に対するベタイン投与の探索的試験などを行っています。

分子精神医学的研究

ゲノム、エピジェネティックス、モデル動物、バイオマーカー探索などの研究を行っています。

最近の業績
お問い合わせ

その他、お問い合わせは下記までお願いします。当科研修部員または医局長がご相談に応じます。
東京大学医学部附属病院精神神経科医局事務室  jimu-psy@h.u-tokyo.ac.jp

大学院生募集

医師のみならず、臨床心理系、精神保健福祉系、実験心理系、情報工学系、分子生物学系などのPh.D.を目指す方々も歓迎しております。

当教室の研究は、分子神経科学領域の基礎研究から画像中心の臨床研究、疫学・心理社会的研究まで、幅広い領域の研究が可能であることが特徴です。

大学院への入学状況:毎年、平均5名程度

各年度の博士課程の募集に関しましては、脳神経医学専攻のホームページをご覧ください。例年、5月ごろに説明会があります。

外国留学

学位および、医師の場合は指定医も取得した後が望ましい。医局としては積極的に援助します。

留学状況:
これまでの留学先は、米国Harvard大学、National Institute of Mental Health (NIMH)、University of California, San Diego、Virginia Commonwealth University、カナダUniversity of Toronto、英国University College London、King's College Londonなどがあります。

研究被検者募集

研究倫理・利益相反開示

当科で診療を受けられた患者さんへ

研究協力のお願い

精神神経科診療記録を利用したデータベースの包括的後ろ向き解析
当科で研究に参加された方へ

以下の研究につきまして、研究の一部説明文書が改定されました。変更部分は下線で示しております。ご参照ください。

健常者および精神神経疾患患者における脳MRIと認知機能の関係
精神疾患における認知機能障害と神経心理学的指標・生理指標の関連について
精神疾患における近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いた脳機能検査法の開発
精神疾患における脳磁図を用いた脳機能検査法の開発
抑うつ症状を呈する精神疾患の脳機能基盤と経時的変化についての縦断的研究
磁気共鳴画像装置(Magnetic Resonance Imaging)で得られた脳画像と臨床評価尺度のデータベース構築と多施設による共同運用
精神科病院への長期入院を経て地域生活に移行した重度精神疾患をもつ人の転帰調査
患者と医師のshared decision makingの促進要因を明らかにするための調査のデータ解析
研究課題3878 「精神神経科こころのリスク外来インターネット相談事業に関する疫学調査」
精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究
てんかんモニタリングユニットの入院患者におけるてんかんおよびその類縁疾患に関する研究
リカバリーセンター通所者を対象とした研究
精神病前駆期・初発精神病の早期介入に資するバイオマーカーの探索的研究
22q11.2 欠失症候群に関する調査
(22q11.2 欠失症候群をもつ当事者・家族の支援に必要な生物・心理・社会的情報の収集)
22q11.2 欠失症候群のレジストリの構築研究
精神疾患をもつ人のリカバリーへの早期支援法の開発研究
「青春期の健康・発達に関するコホート調査」(東京ティーンコホート)における遺伝子解析研究にご参加いただいた方へ
「青春期の健康・発達に関するコホート調査」(東京ティーンコホート)における遺伝子解析研究(サブサンプル)にご参加いただいた方へ
統合失調症入院患者における下剤使用に関連する因子についての多施設共同診療録調査
脳磁図検査における正常亜型波形発生のメカニズムに関する逆問題解析
磁気共鳴機能画像法 (functional-Magnetic Resonance Imaging) による精神機能の脳基盤の研究

研究用臨床指標

mGAF

modified-GAF(mGAF) は、Hall(1994)のmGAF-originalを参考に日本語で作成され臨床指標である。mGAFは、mGAF-originalの項目とアンカーポイントを「症状」と「社会機能」に分割し作成されたmGAF-Symptom (mGAF-S)とmGAF-Functioning (mGAF-F)から構成される。mGAFの特徴はGAFよりもアンカーポイントを増やし、項目の記述を詳細にしていることである。

We developed the Japanese version of the modified GAF (mGAF) scale referring to the mGAF-original (Hall, 1994). The mGAF consists of psychological symptom (mGAF-S) and social functioning (mGAF-F) subscales by splitting the items and anchor points of the mGAF-original scale. The mGAF has more detailed criteria and a more structured scoring system than the original GAF scale.

Eguchi S, Koike S, Suga M, et al.: Psychological Symptom and Social Functioning Subscales of the Modified Global Assessment of Functioning Scale: Reliability and Validity of the Japanese Version. Psychiatry Clin Neurosci. 2015;69(2):126-7.

連絡先について

研究におけるmGAF-original、mGAF、mGAf-Symptom、mGAF-Functioningの使用を希望される場合は、skoike-tky at umin.ac.jpまでご連絡ください。

The Japanese version of the mGAF-original, mGAF-S, mGAF-F, and mGAF scales were permitted within research settings for Japanese participants, and contact to the corresponding author (skoike-tky at umin.ac.jp) when you intend to use them.

日本人を対象とした生物学的精神医学研究のための利き手尺度

本指標は、亀山、丹羽ら(1981)が作成し、MRI脳体積研究や事象関連電位研究の一部で用いられてきた尺度を、更に簡便に利用できるよう改訂したものである。従来本邦では、生物学的精神医学研究において利き手を統制するため、Edinburgh尺度(Oldfield, 1971)が汎用されてきたが、様々な日本語版が存在し、現代の日本人の評価にそぐわない面もある。簡便で明快に点数化出来る本指標は、特に多施設共同研究において有用性を持つと考える。

出典:岡田直大, 笠井清登, 高橋努, 他 (2014) 日本人を対象とした生物学的精神医学研究のための利き手尺度. 日本生物学的精神医学会誌. 25(2): 118-9.

注1)
日本生物学的精神医学会のご厚意によるホームページ掲載許可であり、版権フリーではありません。プリントアウトを販売する、プリントアウトを電子ファイル化して頒布する、その他学会の権利を侵害するおそれのある行為は厳にお慎み下さい。

注2)
本指標を利用した研究の成果を英文で学会・論文発表される際には、以下のように引用元を記載してください。

Okada N, Kasai K, Takahashi T, Suzuki M, Hashimoto R, Kameyama T, Hiramatsu K, Saito O, Niwa S. Rating scale of handedness for biological psychiatry research among Japanese people. Japanese journal of biological psychiatry. 2014; 25(2): 118-9 (in Japanese).

日本人を対象とした生物学的精神医学研究のための教育歴をもとにした簡易社会経済状態尺度

本指標は、本人および両親の教育歴のみからSESを算出する簡易評価尺度である。従来本邦では、生物学的精神医学研究においてSESを統制するため、教育歴と職業から段階付けするHollingshead Scale (Hollingshead, 1957) が用いられてきたが、正確性や評点の難しさが問題であった。簡便で明快に点数化出来る本指標は、特に多施設共同研究において有用性を持つと考える。

出典:岡田直大, 笠井清登, 高橋努, 他 (2014) 日本人を対象とした生物学的精神医学研究のための教育歴をもとにした簡易社会経済状態(socioeconomic status; SES)尺度. 日本生物学的精神医学会誌. 25(2): 115-7.

注1)
日本生物学的精神医学会のご厚意によるホームページ掲載許可であり、版権フリーではありません。プリントアウトを販売する、プリントアウトを電子ファイル化して頒布する、その他学会の権利を侵害するおそれのある行為は厳にお慎み下さい。

注2)
本指標を利用した研究の成果を英文で学会・論文発表される際には、以下のように引用元を記載してください。

Okada N, Kasai K, Takahashi T, Suzuki M, Hashimoto R, Kawakami N. Brief rating scale of socioeconomic status for biological psychiatry research among Japanese people: A scaling based on an educational history. Japanese journal of biological psychiatry. 2014; 25(2): 115-7 (in Japanese).

日本語版National Adult Reading Test(JART)の
25項目版(JART25)の筆記版の開発

東京大学大学院医学系研究科精神医学 小池進介、笠井清登

JARTは、精神疾患患者の病前IQを簡便に調べる方法として、National Adult Reading Test(NART)1)の日本語版として開発された2, 3)。JARTは、漢字2~3文字からなる単語50語の読みテストであり、検査者は被験者に単語リストを提示し、音読してもらうことで、正答数をカウントし、病前IQを推定する2, 3)。また、25項目短縮版(JART25)の妥当性も担保されている3-5)。もともとJARTは、アルツハイマー病を持つ人の病前IQを対象として標準化された2, 3)が、その後統合失調症を持つ人にも妥当性が示された4, 5)。

近年、大規模な臨床疫学調査・研究などで、対象者の知的レベルを簡便に評価するスケールへのニーズが高いが、既存のJARTは面接法であるため、多数のデータを取得することが困難であった。大規模疫学研究では、質問紙調査が一般的であるため、筆記版の開発が必要である。そこでわれれれは、JART25の筆記版を開発した6)ので、日本人を対象とした臨床疫学研究等に広く利用いただきたく、ここに紹介する。
 NARTは、不規則な発音をする英単語を発音してもらうことで採点する。しかし、日本語の特性上、不規則な読み方をする漢字を音読してもらっても、ひらがなで書いてもらっても、判定は変わらない。そこで我々は、被験者に「何も調べないで回答してもらう」よう教示し、筆記版JART25の回答を得た。後日、通常のJART25を実施してもらうことで、筆記版JART25の信頼性を検討した。

【JART25筆記版の使用について】

JARTの版権は、新興医学出版社にあります。必ず
『知的機能の簡易評価 Japanese Adult Reading Test(JART)実施マニュアル』
および問題用紙・記入用紙を正規にご購入のうえ、ご使用ください。JARTは面接法を想定して開発されていますので、筆記版使用のための当面の措置として、正規の問題用紙の上に回答すべき25項目を被験者にわかるようにマーキングし、正規の記入用紙(本来は検査者が被験者の回答を記入するためのもの)を被験者の自記回答用としてお使いください。
なお、当方に対する筆記版JARTの使用許可等のご連絡は不要です。

本研究で用いたJART25筆記版実施の際の教示の情報を希望される場合は、skoike-tky[at]umin.ac.jpまでご連絡ください。

筆記版JARTを使用した研究の学会発表・論文等には文献6) Hirata-Mogi S et al. 2016を引用ください。

【参考文献】
1) Nelson H: The National Adult Reading Test (NART) Test Manual. NFER-Nelson, Windsor, UK, 1978.
2) Matsuoka K, Uno M, Kasai K et al: Estimation of premorbid IQ in individuals with Alzheimer's disease using Japanese ideographic script (Kanji) compound words: Japanese version of National Adult Reading Test. Psychiatry Clin Neurosci 60: 332-339, 2006
3) 松岡恵子, 金吉晴: 知的機能の簡易評価 Japanese Adult Reading Test (JART). 2006, 東京: 新興医学出版社.
4) 植月美希, 松岡恵子, 金吉晴ら: 日本語版National Adult Reading Test (JART)を用いた統合失調症患者の発病前知能推定の検討. 精神医学 48: 15-22, 2006.
5) 植月美希, 松岡恵子, 笠井清登ら: 統合失調症患者の発病前知能推定に関する日本語版National Adult Reading Test(JART)短縮版妥当性の検討. 精神医学 49: 17-23, 2007.
6) Hirata-Mogi S, Koike S, Toriyama R, et al.: Reliability of a paper-and-pencil version of the Japanese Adult Reading Test short version (JART25). Psychiatry Clin Neurosci. 2016 in press.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pcn.12400/abstract

日本語版リカバリープロセス尺度
The Japanese Version of the Questionnaire about the Process of Recovery (QPR-J)

The questionnaire about the process of recovery (QPR) (ST Neil, 2009) を日本語翻訳し、その日本語版リカバリープロセス尺度(QPR-J)の信頼性・妥当性を確認しました。
Kanehara A, Kotake R, Miyamoto Y, Kumakura Y, Morita K, Ishiura T, Shimizu K, Fujieda Y, Ando S, Kondo S, Kasai K. The Japanese version of the questionnaire about the process of recovery: development and validity and reliability testing. BMC Psychiatry. 2017 Nov 7;17(1):360.

【日本語版リカバリープロセス尺度(QPR-J)の修正について 2020/1/9】

本尺度の選択肢は
全くそう思わない: 1 ~ とてもそう思う: 5という選択肢から、
全くそう思わない: 0 ~ とてもそう思う: 4という選択肢に修正しました。

日本語版リカバリープロセス尺度(QPR-J) 2020.1.9版

https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1186%2Fs12888-020-2430-y/MediaObjects/12888_2020_2430_MOESM1_ESM.pdf

オリジナル版The questionnaire about the process of recovery (QPR) (Neil et al., 2009)において、strongly disagree: 0 ~ strongly agree: 4の選択肢によって得点化が行われていることから、得点化における混乱を避けるために、選択肢番号をオリジナル尺度の得点である0~4に修正しました。

掲載論文(Kanehara et al. BMC Psychiatry 2017)の調査実施では1-5を選択肢番号とした質問紙で行いましたが、解析時に選択肢番号1-5から1を減じ0-4と得点化して統計解析を行い、その結果を論文に掲載しているため、論文の数値はオリジナル版と比較していただくことが可能です。これらの修正は、BMC Psychiatry誌の編集長に報告し、以下のCorrectionとして承認されております。

Kanehara A, Kotake R, Miyamoto Y, Kumakura Y, Morita K, Ishiura T, Shimizu K, Fujieda Y, Ando S, Kondo S, Kasai K. Correction to: The Japanese version of the questionnaire about the process of recovery: development and validity and reliability testing. BMC Psychiatry. 2020 Jan 9;20(1):12.